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たかすのきものめぐり① 薩摩絣
永江 明夫さん



 宮崎県都城市に、薩摩絣の織元を訪ねました。その織元、東郷織物は、薩摩絣の発明者である永江明夫さんの機場(はたば)で、今では唯一の薩摩絣の製造元です。
 永江さんは今年90歳。大学教授のような風格をお持ちで、これまでのご自分の来し方や薩摩絣の魅力について、穏やかな物腰でいろいろお話くださいました。

 薩摩絣は日本の綿織物の中では最高級の格をもつものです。80番手の太さのエジプト綿の糸を染めて、絣糸をつくり、それを使って大島紬とほぼ同じ工程で作られます。細い絹糸ではなく木綿糸で細密な絣模様を織り出すことは大変な手間です。また下世話な話ですが、絹織物ほど高く売れないので、綿織物の作り手は本当に織物か綿が好きな人でないと務まりません。

 永江さんは、戦前は建設設計者として大手企業に勤めるサラリーマンでした。「復員して、これまでにない織物を作りたいという思いにとりつかれ、その一心でいろいろと研究を重ねて薩摩絣を完成させることができました」とおっしゃいます。「とはいっても、もともと勤勉なほうではありませんから、マイペースでやりました。ま、いろいろ大変なことはありましたが、周囲の人にも時代にも支えられてなんとかかんとかやり遂げることができましたよ」。

 中でも大事なのは、なんと言っても織り手さんです。人一倍根気のいる綿絣の織り手さんを育てるために、永江さんは最初から難しい仕事をお願いして、狭き門より入ってもらうのだそうです。私も多くの織物産地を見てきましたが、東郷織物さんの織り手さんほど手のいい織り手さんをもっている機元には、確かにあまりお目にかかりません。

 そんな永江さんが作る薩摩絣はどことなくユーモアがあり、また独特のおしゃれな感じが漂います。いいかえると「洒脱(しゃだつ)」なのです。 「なぜこんな洒脱なものが作れるのかな」と思いながらお話を聞いていると、分かりました。永江さんはとても映画好き、美術品好きなのです。お好きなのは、ミロやカンジンスキーなど、やはりちょっとユニークな部類の画家たちです。

 聞くと、永江さん自身も、若いときからよく絵を描かれていたようです。「それなら、ぜひ」とお願いして、その画集を拝見したところ、これがなんとも味があります。描かれている絵すべてにユーモアと人類愛が感じられて、思わず見入ってしまうような楽しい画集なのです。中には、ちょっとシニカルで、アイロニーがある「言葉」や「詩」が書き添えられている作品もあり、それがまた言い得て妙な言葉や詩なのです。

 すっかり感心してしまい、「永江さんの薩摩絣はもちろん素敵ですが、この絵もいいですね。私と組んで新進画家として売り出しませんか」と冗談を交わして、二人で大笑いしました。

 東郷織物における実質的な仕事は、すでに後継者にバトンタッチした永江さんですが、今も毎日、”出勤”して、仕事場の空気を楽しんでおられます。日当たりのよい二階の一室が、永江さんの執務室です。ここで働く現役の従業員の人が皆、永江さんの出勤のひとときを大事に考え、永江さんの存在を尊重されている感じが伝わってきました。「志す人がいて、支える人もいて、豊かな作品が生まれ、そして世に出て人を楽しませてくれる」というプロセスが、目の前に展開されていて、私を感動させてくれたのでした。

 今も、永江さんの仕事を見るたびに、あのひととき、あの空気や感動を思い出し、それらを今度は私が皆様に伝えられないものかと考えるこのごろです。

 vol.24(2005年3月発行)より


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