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対談この人と
話そう...



たかす文庫「この人と話そう…」
日本刺繍『露草』
三原 佳子 さん


女子美術短期大学にて日本刺繍を専攻、
日本刺繍作家・栗田敬子氏に師事。
百貨店呉服部の勤務を経て独立。
着物作家・丸山正氏の制作に20年以上携わり、
伝統的な技法と現代的なセンスが交わる

作品世界を広げる。
2011年 東京・杉並にアトリエ兼ショールーム、
着つけと刺繍の稽古場として『日本刺繍 露草』を開く
2016年 神楽坂の古建築のシェアアトリエに移転

聞き手 蓮井将宏(や和らぎたかす店主)



古い甍の屋根の「鈍色」の世界、幼い頃の一時を古民家で過ごした三原さんの原風景です。
晴天、曇天、雨天と甍の表情には同じものはなく……
それはまた、三原さんの作り出す帯のようでもあり、私達を静かな銀色の海に誘ってくれるようでもあります。



蓮井:三原さんは女子美在学中に日本刺繍を学んで、百貨店の呉服部に就職されたそうですね。今のような着こなしはどういうところから始まったんですか?何かイメージがあるんですか?

三原:祖母が真夏以外着物を着ている人で、祖父は時代劇が好きで若い時に道楽で骨董屋さんをやっていたような人で、住んでいた家が古民家みたいなとこだったんですよ。その時の風景がこういう、うす暗い感じで…

蓮井:陰翳礼讃の世界…

三原:そうですねぇ、夢の様に、その家が好きだったんです。

蓮井:それで「四十八茶百鼠」のような、江戸時代の地味な中にも燻銀みたいな粋なのが好きなんですね。

三原:二十歳で就職した頃は友禅とか、若い子が着るにしてはちょっと地味だけど普通の着物も着ていました。でも二十五歳の時、偶然丸山正さんの展示会を見て、ああいう風に渋い着物着て良いんだ!?と衝撃を受けたんです。

蓮井:呉服業界ではそれまでなかった世界でしたからね。でも丸山さんの場合は単なる墨色やグレーの地味な着物というだけでなく、素材感とか生地から全然違いました。現代的、現代アートに通じるような感覚ですね。

三原:その時私は着物を着ていたんですが、若いのに着物着てると珍しがられて。それで巻きつけしてもらって、私が本格的に刺繍をやりたいと思っている話になり、縫い見本を作って見てもらうことから丸山さんとのご縁がはじまりました。

蓮井:丸山さんからは何を一番学びましたか?

三原:今にして思えば、この部屋の設えとか什器なんかも全部自分でしてるんですけど、そういうところですかね。

蓮井:丸山さんも自分で空間作りをDIYしてたんですか。うちでの最初の個展の時に、繊細な刺繍の手仕事をされている三原さんが工具を持って会場の設営もされることに驚きました。それが丸山さんの哲学だったんですね。自分が作る着物とそれを飾る空間が一体であることがベストで、借り物の空間に置くのではなくて。それを踏襲してるのが三原さん。

三原:全部一緒なんですよね、作ることは着物や帯だけじゃなくて、什器に塗料を塗っていても帯の箔やってるのと同じ感覚なんですね。そういう考え方がすごく勉強になったなと思います。

  


蓮井:最近変化してきたことはありますか?

三原:私、今まで自分では半幅帯はあまり使わなかったんですよ、後ろ姿がイメージじゃなくて。でもさすがに今年は暑くて、…半幅帯しかしてない。結び方も色々悩んだ結果、矢の字という結び方にして、そうすると半幅帯も悪くないかな、と思う様になりました(笑)。下着も長襦袢は着ないで「うそつき」にするとすごく楽なんですよ。夏はそれ1枚に着物1枚着たら良いので、最高ですね。
私が作るものでいうと、本当は手を尽したものを作りたいんだけど、今は時間と材料をかけても動かないからモチベーションも上がらない、そういう世の中の気分だから自分自身もやっぱり重たいものを身につけたくない、そのギャップが埋められないですね。今はほとんどの帯を名古屋帯の比翼仕立てにしていて、袋帯っぽく見えなくもない感じにしています。

蓮井:その方が軽いし楽なんですよね。

三原:はい、自分自身に置き換えても、今は袋帯の気分ではなくて。

蓮井:これから挑戦したい色はありますか?

三原:シルバーをずっとやりたいと思って、やっているんですけどそれも迷いながらで。以前は錫箔、今はアルミ箔中心で使っていて、アルミだと青白いんですよね。それが良いと思って。作業の工程上、帯の生地全部が均一に同じ具合にはならないので、良いとこ取りで。また、着る立場で機能的に考えるとお太鼓の部分から手先までずっと同じである必要がないんですよね。手先を軽くするためにお太鼓のところは帯心を二重にして、他は一重にしています。着る時も手先が軽い方が楽ですから。

蓮井:帯は軽い方が良いですからね。

三原:昔の感覚でいう繋がっている有り難さより、軽い方の有り難さを取るのと、生地がもったいないというのがあって。使いたいと思う生地が手に入らない時があったり、その年によって違ったり、機屋さんがやめることがあったりで素材がなかなか手に入らなくなっているんですよ。

蓮井:あるものをいかに大事に使って調和しているように見せたら良いのであって、なんでもかんでも昔と同じでなかればいけないという考えを改めなければいけませんね。

三原:切り替えている帯は、お客様も軽くて喜ばれる方も多いんですよ。断ち方や、色の取り合わせ、裏地も含めて入念に考えているつもりです。

蓮井:知恵を出してやらないといけない時代ですね。それにしても三原さんは本当に着物が好きなんですねぇ。

三原:好きですね。洋服も着ますけど、出掛けていくときはだいたい着物。人と会う時は着物です。

蓮井:三原さんには12月に個展をお願いしています。華美な色が氾濫している現代で、落ち着いた暮らしの中のエレガント、というような三原さんの着こなしの提案を見てもらう意味があると僕は考えているんですよ。

三原:同じような色の中でも明暗や表情が少し違う、その少しの違いが大事で、色々たくさんはいらないと思うんだけど、必要とされるものを作りたいと思っています。自分では必要と思っているので、誰かも必要だといいな、と。

蓮井:三原さんは好きだから作っている、というのがよくわかります。

三原:やっぱり毎日着物を着ていると今日はこういうのがあれば良いなとか、これじゃないんだよな、というのが出てくるんですよ。

蓮井:天候や、季節や気分によって欲しい色が変わりますからね。着物もお道具の取り合わせと同じ、調和です。それからやはり江戸時代の粋な世界がやはり三原さんの根底にあるんでしょうね。

三原:最近、ずっと鬼平犯科帳にハマってずっと観てるんですけど、昔、父が大好きだったのを覚えていて、なんとなく最近そういうことをふっと思い出して、観たらハマったんです(笑)

蓮井:三原さんの帯は布をいかに大切にして生かしきるか、がテーマです。切りばめ、刺繍等により一本の帯に布がパズルのように出来上がります。三原さん自身がお着物を着るのでその立場にて美しい絵になる様に仕立てられます。一針一針心を込めて…。手間ひまをかけた帯は締められてまた一段と輝きます。


vol.94(2022年9月発行)より

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