店主の
ひとりごと
杜の風景より | |
毎日、たかすの杜に朝日を見にゆき、なにをするでもなく、自然の感覚に身を委ねます。 しっかりと根を張った草木の中にいると、心が落ち着きます。 不思議な事に、思考過程も明快になる様です。そんな中でふと気がついた事をお話します。 たぶんこの話を聞いても何の驚きもないかもしれませんが、小生にとっては大事な 発見であり、自然の恵みに深く感謝した一瞬でした。 それはある朝のこと。いつものように杜に佇んだ小生は、春になって子どもの手の様に 小さく柔らかな葉を生やした山桜やもみじなどの木々が、やがて伸び伸びと成長して、 今や次第に強さを増してきた日差しから小生を優しく守ってくれている、という事に 思い至ったのです。同時に、緑という、人間を心豊かにしてくれる色に包まれる幸福感が 胸にわき起こりました。そして感じたのです。自然は、本当は人間を守る為に 日々生きているのではないかと…。 春夏秋冬、四季の中で、ある時は陽陰(ひかげ)を与え、ある時は太陽の恵みを与える 為に落葉し、私達のCO2をO2に変化させ、四季折々花を咲かせ実をつけそれを 食べさせてもらい…。もう全てが母性の塊です。 そんな事にこの歳になって初めて気がつきました。 「人は自然の利子で生活すべきである、しかし人間はその元本まで手を付けている」 ということを、脚本化 倉本聡氏がアイヌ民族の萱野茂氏の言葉として伝えていますが、 今こそこの言葉の深さを考えないといけません。 有限の世界(地球)に住んでいる者が、無限の欲望で生きようとする時代を、 終える時です。人はいつも自然に包まれ、その中でしか生きてゆけないのです。 そんな事を杜は教えてくれました。今も、これからもずっと…。 |
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vol.45 (2010年6月発行)より |
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